あとがき

バカな”動物おたく”が、ひとりぐらい、いたっていいと思って始めた動物保護活動が、いつのまにか20年たちました。ここ数年、東京オリンピック開催決定のせいか、著名人たちが、動物に関心を持ってくださっています。そして、社会も目を向け始めたようです。でも相変わらず、すべてがボランティアなので、苦しい作業です。しかも、やっと助けて、これで自然に帰せると思っても、安心して帰せる自然は、もうほとんどありません。昔からの風景も時代とともに変わっていき、道路が舗装され、田園風景がなくなると少しずつその姿が壊れてゆき、同時に生き物が集まる環境も失いつつあります。減少していく生き物が集まる環境を自分の庭で再現したいとの願いから、ここ八ヶ岳の里山に住まいを移しました。


ペットは無言のサイコセラピスト

「スヌーピー」の漫画には、いつも毛布を手離さない男の子、ライナスが出てきます。拒食症になった女の子がいました。いわゆる「いい子」で「ノー」と言えないタイプ。食べないと、母親は「食べなさい、食べなきゃ死ぬわよ」と食べる、食べないで一喜一憂。家族中で、彼女を責め立て、さらに、しっかり者の姉が追い打ちをかけます。いやがうえにも家庭内は緊張感を増し、それがどれだけ重荷だったか。そこで勧められて、目が開いたばかりの小さな猫をもらうことにしました。自然と話題が猫に移っていったので、気が楽になり「そんなことをしちゃダメ」と猫に声をかけているうちに、大きな声がだせるようにもなりました。けれども、毎日あまりにも猫をいじくりまわしたため、今度は猫が拒食症になってしまいました。「食べなきゃ、死んでしまう」と心配のあまり獣医さんに相談すると「食べることを押し付けてはいけない」との助言。そこで初めて、自分の問題に気付きました。その後、大学を卒業し、無事に、結婚生活を送っています。


対人恐怖症や拒食症などの不登校児に犬や猫、ウサギなどのペットと暮らさせてみることで、治療の効果があがります。心理療法に「ペット・セラピー(動物療法)」を組み合わせて用いることによって、自我の成長を助けたり、心の安定を取り戻したりすることができるようです。動物は人の心にリアルタイムに反応し、そこには母親の『・・・だからいけない』といった時間のズレはありません。動物とは、その瞬間、瞬間につきあうことができるのです。

殻に閉じこもる人間は「自分の心を誰もわかってくれない」と言います。批判されることを恐れ、他を寄せ付けまいとします。動物は何も言わないで、自分の話に耳を傾けてくれる。見つめて受け入れてくれる。それだから、自然に動物を求めてゆくのでしょう。動物がその「橋渡し」となり、現実への折り合いをつけてくれます。そこには、共に戦い、成長した時間があります。同じ時を心を許した相棒として支えあって生きてきたのです。ところが、回復して学校に行くようになると、それまで動物にベッタリだったのが、不思議と見向きもしなくなるといいます。